本研究は、石西礁湖でリーフ上面域(高波浪域)のサンゴ再生技術の研究開発を行い、インドネシアのマナド海域で再生実験を行って、熱帯海域のサンゴ再生マニュアルの開発に資することを目的とする。サンゴは海洋の基礎生産者であり、なおかつ防波堤機能を有するサンゴ礁の侵食を補修してきた。しかし石西礁湖ではリーフ上面域のサンゴは既に死滅している。この状況は世界的に問題化しており、それに対処できるサンゴ再生技術の開発を目指す。平成21年度は、前年度に開発した高強度型着床具を用いた海域実験を、前年度に行った海域予備調査の結果をもとに、石西礁湖とマナド海域で開始した。高強度型着床具を用いたサンゴ着生実験と移植実験を石西礁湖の高波浪海域で行うとともに、石西礁湖のアウターリーフ上面域で自然に着生した1才の稚サンゴの生残と成長を明らかにするための追跡調査を開始した。マナド海域ではまだ一斉産卵時期について正確なデータは得られていないが、石西礁湖と同様に5月の満月の可能性が高いと考えた。高強度型着床具を4月にマナド市の護岸提に設置してサンゴ幼生を着生させ、8月に静穏なブナケン国立公園(16km沖)まで移動し再設置した。石西礁湖では礁湖内のサンゴが度重なる白化で死滅し、この10年間で幼生の供給海域が激変した。かつては供給源が礁湖中央から南部海域であったが、そのサンゴは1998年からの4回の白化を経て2009年時点でほぼ死滅した。変わって1998年の白化で死滅し、2009年現在は再生した北側のリーフが幼生供給源となった。マナド海域においても同様の現象が起きており、サンゴが豊かなブナケン国立公園では幼生が殆んど加入していないため、マナド護岸提を着床具への幼生着生海域、そしてブナケンを静穏な育成海域として利用したものである。
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