本研究は、石西礁湖でリーフ上面域(高波浪域)のサンゴ再生技術の研究開発を行い、その技術をインドネシアのマナド海域に応用してサンゴ再生実験を行うとともに、熱帯海域のサンゴ再生マニュアルの開発に資することを目的とする。サンゴは海洋の基礎生産者であり、なおかつ防波堤機能を有するサンゴ礁の侵食を補修してきた。しかし石西礁湖ではリーフ上面域のサンゴは既に死滅している。この状況は世界的に問題化しており、それに対処できるサンゴ再生技術の開発を目指す。平成22年度は、高強度型着床具を用いた海域実験を石西礁湖とマナド海域で行った。石西礁湖ではサンゴの一斉産卵前の4月に着床具を設置して3ヶ月後に回収してサンゴの着生数を計測した。また北側のアウターリーフ上面域で自然に着生したミドリイシ属の1才サンゴを2才半まで追跡し、その生残と成長を明らかにした。マナド海域では前年度までの実験で一斉産卵時期は4月と推定された。そこで4月に4ヶ所の海域に着床具を設置し、6ヶ月後に一部を回収して実験室に持ち帰り、着生サンゴの概略分類と着生数を計測した。また21年度に実験的に設置していた着床具に育った稚サンゴを用い、小規模な移植実験を行った。石西礁湖では礁湖内のサンゴが度重なる白化で死滅し、1998年の白化を契機に幼生の供給源が変化した。かつては供給源が礁湖中央から南部海域であったが、2007年以降は全滅後に再生した北側リーフが供給源となった。マナド海域においても同様の現象が起きており、サンゴが豊かなブナケン国立公園では幼生が殆んど加入していないため、21年度はマナド護岸提を着床具への幼生着生海域ブナケンを静穏な育成海域として利用した。しかし22年度の調査で護岸提のミドリイシの着生数は激減し、新たな着生海域を探す必要があると判断された。
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