研究概要 |
本研究では、酸化物半導体(Indium-Tin-Oxide : ITO)基板上で垂直配向させたπ共役系分子を化学結合によってITO表面上に固定化する。そして走査型トンネル顕微鏡(STM)の探針をITO表面上の共役系分子と化学的に接合し、基板-π共役系分子-STM探針が一体となったナノ構造体を形成する。この構造体をひとつの物質系と捉え、ITO基板と分子あるいは分子とSTM探針を結ぶ化学結合種や共役系分子の分子長が、ナノ構造体の電気伝導性にどの様な影響を与えるかを明らかにすることを目標としている。平成21年度は、共役系高分子の共役連鎖長が電気伝導性に及ぼす影響を明らかにする為に、エレクトロスピニング法を用いた共役系高分子の配向制御と電気伝導性の関係に着目して検討を行った。我々は、コレクター切替式エレクトロスピニング装置を新たに開発し、配向と本数を正確に制御した共役系高分子を含むサブミクロンファイバーを作製することに成功した。一軸配向後のサブミノクロンファイバーは,延伸率2倍時では平均径490nm,長さ50mm(アスペクト比約1.0×10^5)であった。延伸したサブミクロンファイバー中における高分子鎖の配向評価を偏光蛍光測定から行い、共役系高分子鎖が高度に一軸配向している事を確認した。一方、櫛型電極を用いた電気伝導性測定の結果、延伸率2倍のファイバーは未延伸のファイバーに比べ導電率が26倍向上し,30A/cm^2を超える極めて大きな電流密度が得られた。
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