研究概要 |
本研究は、シリコントランジスタ中の単一のドナー(あるいはアクセプター)を用いた新しい素子の開発を目指している。23年度は、主に以下の成果があった。 1 単一ドナー電子の制御 シリコンナノワイヤ中に形成された微細MOSダイオードの極近傍に、少数個のドナー(砒素)を選択的に導入することにり、MOSゲートの1クロックでドナー数に依存した電子の転送が可能であることを実験的に示した。これは、個々のドナーの電子捕獲放出過程を利用したもので、半導体中の原子(ドーパント)をactive componentとして用いる「原子デバイス」による電荷精密制御に道を開くものである。 (G.P.Lansbergen et.al.,Appl.Phys.Lett.掲載) 2 微細トランジスタにおける単一ドーパント効果の観測 単一イオン注入技術を用いて選択的にドーピングを施したトランジスタにおいて、ソース側に導入されたドーパントがキャリア走行減速に関係が深いことを支持する結果を得た。 (M.Hori et.al.,Appl.Phys.Lett.掲載) 3 チャージポンピング法のを用いた少数子トラップに関する新知見 極微小ゲートのMOSトランジスタを用いたチャージポンピングの実験において、単一のトラップによるチャージポンピング電流が、予想される値よりも常に小さくなることを見出した。この結果は、長年信じられてきたチャージポンピング基礎理論の変更を迫る重要なものである。 (T.Tsuchiya,Appl.Phys.Express掲載) 4.トランジスタ中ドーパントの荷電状態 トランジスタ中ドーパントの荷電状態を精密に取り扱うための、3次元シミュレーションを立ち上げた。イオン化エネルギーの設定方法などの基本事項を確認した。(未発表)
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