研究課題
人の認知・判断特性と交通移動体の特徴を踏まえた多層リスク制御技術の開発と過失に関する新しい法理論の提案を目指し、(1)ヒューマンファクター、(2)権限と責任、(3)技術的支援の3つの研究アスペクトを設けて研究を実施した。平成22年度の研究成果は以下のとおりである。(1)ヒューマンファクター研究アスペクトでは、運転支援システムへの運転者の「過信」および「過度の依存」のシステム依存性と認知心理学的特性を明らかにした。また、わずらわしさを惹起しない注意誘導情報提示のあり方と、安全に関わる情報を音声で与えたときの視覚的注意に及ぼす影響などをシミュレーション実験によって評価した。(2)権限と責任研究アスペクトでは、交通移動体の事故事例をもとに、システム性事故における刑事過失責任の根拠を「状況認識の不適切」に求める問題について、従来の責任要件では不十分であることを明らかにし、責任根拠の明確化を試みた。特に、高度技術に基盤をおく運転支援システムを例にとり、システム設計のあり方について、刑事法学的な論点整理を行った。(3)技術的支援研究アスペクトでは、運転者のリスク知覚・解釈、判断、操作の一連の仮定を多重防護的に支援する多層リスク制御機構の基盤要素技術として、着座接触圧から低覚醒状態を検出する技術、視行動にもとづく車線変更意図検出技術、歩行者への衝突を回避する自律的安全制御技術、動画像から人の行動を認識する技術を開発し、それらの有効性をシミュレーション実験によって確認した。
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