研究概要 |
本研究は,人の認知・判断特性と交通移動体の特徴を踏まえた多層リスク制御技術の開発と過失に関わる新しい法理論の提案を目指すものである。「結果予測」の前提となる状況認識には3つのレベルを区別するのがふつうであるが,どのレベルの確保が人に過大な負担となるかは交通移動体によって異なり,「結果回避」に利用可能な時間も交通移動体の動的特性に依存する。本研究では,領域依存性を検討するうえで必要最小限な交通移動体として航空機,鉄道,自動車を取り上げ,結果の予測と回避に必要なリスク制御要素技術を開発する。特に高度技術システムの本格導入が目前に迫っている自動車については,人の認知・判断・操作の能力とその限界を踏まえ,情報提示,注意喚起,警報提示,制御介入の4層からなる多層リスク制御技術を構築し,有効性評価を行う。同時に,人の認知・判断特性ならびに背景にある技術システムの諸問題と関連させながら,交通移動体の事故における過失の認定に関する旧過失論,新過失論,新・新過失論の問題点をシミュレータ実験の併用によって定性的かっ定量的に明らかにし,高度技術を背景とするシステム性事故の特質を考慮した刑事法的過失論とそれを具現化する機能的安全法制を提案する。
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