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2009 年度 実績報告書

神経幹細胞の運命転換における核クロマチンの「グローバルな」状態変化の意義

研究課題

研究課題/領域番号 20241044
研究機関東京大学

研究代表者

後藤 由季子  東京大学, 分子細胞生物学研究所, 教授 (70252525)

キーワード神経細胞 / 幹細胞 / クロマチン
研究概要

神経幹細胞はニューロンへと運命決定しても、すぐにはニューロンとしての形質を発現せず、まず適切な場所へと移動してから成熟する。ニューロンが成熟する際には、軸索・樹状突起形成、膜電位の分極など、様々な形質が一斉に現れる。細胞の形質発現は、遺伝子の転写によって引き起こされることがよく知られているが、遺伝子の転写を制御するメカニズムの1つにクロマチン状態の制御がある。クロマチンがあまり凝集していない「ゆるい」状態にある部位の遺伝子は、転写因子などが接近しやすいために転写が活性化している。これまで、こういったクロマチン状態の変化はそれぞれの遺伝子座ごとに「ローカルに」変化していると考えられてきた。しかし、ニューロンの成熟のように様々な形質が一斉に発現するメカニズムがローカルな遺伝子座の変化のみで説明されうるのか、あるいは他にも何らかのメカニズムがあるのかは明らかになっていなかった。我々は、ニューロンの成熟過程においてクロマチン状態がどのように変化しているかを調べるためにクロマチン分画実験を行った。すると、ある塩濃度の溶液やDNase処理によって遊離するヒストンの量がニューロンの成熟に伴って上昇することがわかった。また、FRAP(Fluorescence Recovery After Photobleaching)実験によりクロマチン分子の移動度を調べたところ、ニューロンの成熟に伴って移動しやすくなっていることがわかった。これらの結果は、ニューロンの成熟に伴ってクロマチン状態が核全体、ゲノム全体で「グローバルに」ゆるくなったことを示唆している。さらに、クロマチンリモデリング因子が核全体でクロマチン状態がゆるくなるために必要であること、またニューロンの成熟に必要であることを見出した。そして、リンカーヒストンH1の変異体を用いて核全体でのクロマチン状態を人工的にかたくしたところ、ニューロンの成熟が妨げられることがわかった。これらの結果は、核全体でグローバルなクロマチン状態がゆるくなることがニューロンの成熟において重要な役割を果たしていることを示唆している。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2010 2009 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Wnt signaling and its downstream target N-Myc regulate basal progenitors in the developing neocortex2010

    • 著者名/発表者名
      Kuwahara, A., et.al
    • 雑誌名

      Development 137

      ページ: 1035-1044

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Mechanisms that regulate the number of neurons during mouse neocortical development2010

    • 著者名/発表者名
      Miyata T., et.al
    • 雑誌名

      Current Opinion in Neurobiology 20

      ページ: 22-28

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Polycomb limits the neurogenic competence of neural precursor cells to promote astrogenic fate transition2009

    • 著者名/発表者名
      Hirabayashi, Y., et.al
    • 雑誌名

      Neuron 63

      ページ: 600-613

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Selective induction of neocortical GABAergic neurons by the PDK1-Akt pathway through activation of Mash12009

    • 著者名/発表者名
      Oishi, K., at.al
    • 雑誌名

      Proc.Natl.Acad.Sci.USA 106

      ページ: 13064-13069

    • 査読あり
  • [学会発表] Temporal Regulation of Neural Stem Cell Fate in the Mouse Developing Neocortex2010

    • 著者名/発表者名
      Yukiko Gotoh
    • 学会等名
      CDB Symposium 2010
    • 発表場所
      理研CDB(神戸)
    • 年月日
      20100323-20100325
  • [学会発表] Regulation and functions of the Akt/PKB pathway2010

    • 著者名/発表者名
      Yukiko Gotoh
    • 学会等名
      AACR/JCA Joint Conference
    • 発表場所
      Waikoloa, Hawaii USA
    • 年月日
      20100205-20100209
  • [学会発表] Temporal regulation of neural stem cell fate in the mouse developing neocortex2009

    • 著者名/発表者名
      Yukiko Gotoh
    • 学会等名
      The International Society for Stem Cell Research 8th Annual Meeting, Prenary lecture
    • 発表場所
      Barcelona, Spain
    • 年月日
      20090708-20090711
  • [学会発表] クロマチンレベルでの神経幹細胞運命制御2009

    • 著者名/発表者名
      後藤由季子
    • 学会等名
      エピグノム研究会
    • 発表場所
      東京大学柏キャンパス生命棟会議室
    • 年月日
      2009-11-12
  • [備考]

    • URL

      http://www.iam.u-tokyo.ac.jp/celltech/

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公開日: 2011-06-16   更新日: 2016-04-21  

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