研究概要 |
目的:本研究の目的は、3種の大腸菌株(実験室株K-12,腸管出血性大腸菌157,腸管病原性大腸菌E2348/69株)について、グローバルな転写制御因子の結合部位をゲノムワイドに比較解析し、3株における転写制御ネットワーク構造の変化を解明し、細菌ゲノム機能の変化・多様化の機構について考察することである。結果:1)簡便で確実性の高い菌株作製系の構築:変異株の作製効率が低いO157、E2348/69株、赤痢菌、非病原性大腸菌SE11、SE15等のシステマチックな転写因子結合部位の解析のために、Hobman博士らが新規に開発した染色体改変システムを用い、変異株を高効率で構築するシステムを確立した。2)H-NSのChIP-seq解析:大腸菌のグローバル転写因子であるH-NSをモデルとして、変異株の作製、ChIP-chipおよびChIP-seq解析、情報解析の一連の工程を他の転写因子について先行して行った。その際、ChIP-chipに加えて、ChIP-seq解析を導入し、当初3株で予定していた解析を、赤痢菌、非病原性大腸菌SE11、SE15を加えた6株で行った。3)E2348/69株のタイリングアレイを作製した。4)ArcAおよびFurのChIP-chip解析:ArcAおよびFurについてはK-12株を用いて、ChIP-chip解析を行った。ArcAに関しては、これまでに決定されている標的遺伝子のうちかなりの遺伝子のプロモーター領域に結合が観察された。一方、Furは、免疫沈降法による、Fur結合DNAの回収率が低く、現在免疫沈降法の改良を行っている。順次、他の株についても解析を行う予定である。5)ChIP-seq,ChIP-chip情報解析システムの構築:すでに得られているChIP-seq解析結果を元に、ピーク検出、比較解析システムの構築を行った。
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