研究課題/領域番号 |
20241045
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
小笠原 直毅 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 教授 (10110553)
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研究分担者 |
大島 拓 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助教 (50346318)
黒川 顕 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 教授 (20343246)
戸邉 亨 大阪大学, 大学院・医学研究科, 准教授 (70207596)
鈴木 穣 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 准教授 (40323646)
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キーワード | ChAP-chip / Fur / H-NS / Zur / 転写ネットワーク |
研究概要 |
昨年度の報告で、Fur、H-NSの比較解析を終了したと報告したが、今年度は、新たな情報解析法を構築し、Fur、H-NSに関する新たな生理的な意義を探索した。その結果、Fur結合部位の塩基配列は、菌株の違いを超えて、きわめて高度に保存されており、菌株間の転写ネットワークの変化は、Fur結合部位の変化ではなく、それぞれのゲノムに獲得された新たな制御遺伝子の増加と、既存の転写ネットワークに含まれていた遺伝子の破壊に依存することが明らかとなった。一方、H-NSはFurと異なり、複数の結合部位において、高い頻度で塩基置換が生じていた。このことは、H-NSの結合が、細菌ゲノムの多様性維持に貢献する可能性が高いことを示している。現在、これらの知見をまとめ、投稿論文を作成中である。また、今年度は、病原性に関係する可能性の高い、いくつかの転写因子のChIP(ChAP)-chip解析を計画していたが、ArcAおよびRpoSに関しては、病原性大腸菌あるいは非病原性大腸菌においても、精製用エピトープタグの付加によって、その活性が著しく失われることが判明し、解析には使用できなかった。現在、対応策を検討中である。一方、Zurに関しては、転写制御活性を十分に維持したまま、HisおよびFlagタグを融合することができ、その融合株を用いたChAP-chip解析およびzur欠損株を用いたトランクリプトーム解析により、K-12株における、Zurレギュロンを決定した。その結果、これまで報告のあった、Zurレギュロン遺伝子以外のZurの標的遺伝子を発見した。この遺伝子は、その機能から、宿主と細菌間の生存競争に重要な意義を有していると考えられ、これまで行ったFurの解析結果と合わせ、金属応答センサーが、大腸菌の宿主内での生存に、重要な役割を担っている可能性が強く示された。
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