研究課題/領域番号 |
20241049
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
海老塚 豊 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 教授 (90107384)
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研究分担者 |
渋谷 雅明 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 准教授 (50170923)
久城 哲夫 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助教 (80373299)
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キーワード | メロテルペノイド / 糸状菌 / Aspergillus fumigatus / ピリピロペン / ニコチン酸 / ポリケタイド合成酵素 / プレニル基転移酵素 / 遺伝子クラスター |
研究概要 |
本年度は、糸状菌Aspergillus fumigatusの生産するメロテルペノイド化合物ピリピロペンの生合成遺伝子の同定を目的とした。ピリピロペンの生合成は、ニコチン酸由来のCoA体をスターター基質とし、2分子のマロニル-CoAの縮合により生じる特異なピロン部分の生成に始まり、これにファルネシル基の付加、末端二重結合のエポキシ化、そしてテルペン部分の環化反応を経て基本炭素骨格が構築されると考えられる。そこで、A.fumigatusゲノム配列中にこの生合成を担うと予想されるポリケタイド合成酵素(PKS)ならびにプレニル基転移酵素(PT)の両遺伝子を含む遺伝子クラスターを検索した。その結果、9遺伝子から成る約22kbのクラスターを見出した。このクラスター中には酸化酵素に加え、CoA ligase(CL)と思われる遺伝子も存在し、ピリピロペンに特徴的なニコチン酸由来のCoA体の生成に関与しているのではないかと推測された。そこで、本クラスター中のCL(pyrl)とPKS(pyr2)遺伝子をA.oryzaeM-2-3株を用いた異種糸状菌発現系にて共発現し、ニコチン酸を基質としてピリピロペン生合成中間体であるピロン体(4-hydroxy-6-(3-pyridinyl)-2Zl-pyran-2-one(HPPO))を生成することを明らかにした。次いで、同じ発現系を用いてCL、PKSならびにPT(pyr6)の3遺伝子共発現を試みた。その結果、これら遺伝子を導入したA.oryzae形質転換株において、HPPOにファルネシル基の付加したfarnesyl-HPPOが生成することを明らかにした。これらの結果は、本遺伝子クラスターがピリピロペン生合成に関与することを強く示唆するものである。今後、さらにクラスター内の遺伝子の機能同定を順次進めていく予定である。
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