研究概要 |
昨年度に引き続きAspergillus terreusのテレトニン生合成におけるエポキシ化酵素以降の検討を行った。テレトニン生合成クラスター中のフラビン要求性モノオキシゲナーゼをプレニル基転移酵素と供に異種糸状菌A.oryzae M-2-3株において共発現し、基質となる2,4-dihydroxy-3,5,6-trimethylbenzoic acidを投与したところ、epoxyfarnesyl化された生成物を単一のジアステレオマーとして確認した。次に、A.fumigatusのピリピロペン生合成におけるPyr4と相同性のある遺伝子(trtl)をテレトニン生合成クラスター中にも見いだし、異種発現タンパクによる機能解析を検討中である。 上記膜結合型新規テルペン環化酵素Pyr4には既知テルペン環化酵素に見られる酸性アミノ酸残基からなる活性モチーフ(DXDXXD等)が見られない。そこで、Pyr4のホモログに共通して存在する酸性アミノ酸残基であるGlu63あるいはAsp218の変異体を作成したところ、これらの変異体はいずれも環化活性を失ったことから、これら酸性アミノ酸残基が協同的に働き基質のエポキシ環のプロトネーションに関わることを明らかにした。 一方、ピリピロペン生合成酵素遺伝子群を用いて、構造類縁体の創製を試みた。ニコチン酸の代わりに安息香酸を出発基質とし、ピリピロペン生合成の5段階の酵素群と反応させたところ、ピリジン環がベンゼン環に置換されたピリピロペン類縁体の生成に成功した。 また、生合成系の融合による分子多様性の拡大を図るため、糸状菌由来I型およびIII型新規ポリケタイド合成酵素をクローニングし、異種発現タンパクを用いた機能同定に成功した。 これらの成果は、メロテルペノイド生合成酵素系を用いた構造多様性の拡大に大きな展望を拓くものである。
|