研究概要 |
昨年度までに,他成分解析に利用できる種々の蛍光性アミノ酸を見出していた。本年度はそれらをペプチドライブラリーに導入し、蛋白質に結合するペプチドや、特定のがん細胞に結合するペプチドを見出す研究を行った。この時、がん細胞に強く結合するペプチドを見出すのではなく、特定のがん細胞にだけ結合するペプチドの探索に重点を置いた。これは昨年度までの結果で、がん細胞に結合するペプチドは比較的容易に見出すことができるが、細胞特異的に結合するペプチドの探索は困難であることがわかったからである。また、本年度ではペプチドスクリーニング条件をより生体条件に近い37℃で行うことにした。昨年度まで行っていた4℃ではペプチドは細胞表面に集積していたが、37℃ではエンドサイトーシスによりペプチドは細胞内に入ることが予想される。この条件で探索を行った結果、オクタペプチドの内中央の6個のアミノ酸までを最適化することに成功した。このペプチドはヒト乳がん由来のがん細胞であるMCF7に強く結合するが、その他のがん由来細胞であるA431やPC3にはその1/3程度以下しか結合しないことがわかった。また共焦点顕微鏡観察の結果、それらのペプチドはがん細胞の内部にエンドサイトーシスによって導入されていることが明かになった。このように3年間の研究により、他成分蛍光法により今までになかった特異性と親和力をもつペプチドが見出された。今後はこれらのペプチドをより実用的なものにするため,マウスインビボ実験に進める必要がある。
|