研究概要 |
野生サクラソウを対象として,QT正解析および発現遺伝子情報であるEST情報に基づくマーカーによるゲノムワイドな探索によってサクラソウの持つ適応的遺伝子を同定することを目的としてESTマーカーおよびSSRマーカーの開発,連鎖地図作製,それらに基づく量的形質遺伝子解析による適応的遺伝子の同定ならびに各地での個体群構造の把握を行った。サクラソウの多様性評価の指標とされてきた花弁形状と花弁面積の集団内。問の遺伝的変異を同一圃場実験によって評価し,DNAマーカーによる集団問分化程度と比較したところ,花弁の切れ込みと最大幅と面積は有意な集団間差が認められたものの,花弁形質の遺伝的変異は主に集団内に維持されていた。さらに花弁形質は自然選択に中立な形質であり,花弁形状変異の大部分を占める切れ込みと最大幅,長幅比に加え花弁面積が集団内の遺伝的多様性の目視評価の指標となりうることが示された。開発したSSRマーカーおよびESTマーカーにより北海道由来個体と長野由来個体の分離家系を用いて連鎖地図を作成し,128座,14個の連鎖群からなる連鎖地図が作成できた。サクラソウは2n=24であるため今後さらに地図を充実させる必要がある。同一家系による適応関連形質のQTL解析を行い,出芽日,開花まで日数,花型および異型花柱性に関わるQTL座を検出した。また,サクラソウ個体群の空間構造が種子生産に与える影響を調査した。
|