デニズンシップとは、国際移民のホスト社会への適応にみられる新しい形態に仮に与えた名称である。かつて、移民がホスト社会に適応するには文化的に同化するしかないとされていた時代があった。すべての適応は「同化」→経済的上昇→国籍(シティズンシップ)取得、という順序を踏んで進むものと考えられていた。本研究課題はその代わりに、経済的ニッチの獲得→非同化エスニック集団としての団体形成を通じてのホスト社会との交渉→非同化を前提としてのホスト社会における地位(デニズンシップ)の制度化、というもうひとつのモデルを提示しようとするものである。研究対象は、アメリカ合衆国におけるヒスパニックとアジア系、ヨーロッパにおけるムスリムの二つの先端事例とし、これらとインド洋圏における華僑・印僑という古典的事例、アフリカン・アメリカンと在日・韓国朝鮮人という参照事例との比較検討から解明することをめざす。
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