本研究の目的は、社会的に構築された差異の関係性であるジェンダーをめぐる支配と差別の構造を、容易には解消しがたい<暴力>の諸相としてとらえ、そこから生じる権力関係の複雑で複合的な諸問題を分析し、その分析を可能にする適切な枠組みを理論的に構築することである。その際着目するのは、グローバル化する世界、ポストコロニアルな状況における「家族親密圏」である。ここで、「家族親密圏」とは、「社会的生の生産と再生産の現場」を意味しており、それを過去と現在の視点から、歴史学、政治学、社会学、哲学・思想史といった分野を学際的に横断し、解明することを企図している。 具体的にいうと、 (1)ジェンダーの視点から、とくに「家族親密圏」という分析概念を設定し、これに焦点を当てることをとおして、あらたなジェンダー概念を構築すること、(2)「家族親密圏」の構造とそこにある固有な社会的実践ならびに権力関係の経験的、歴史的、理論的な問題を分析し、解明すること、(3)こうした理論的枠組に基づき、現実に生起している「暴力」にどのように立ち向かっていけばいいのか、といった解決策を探る、の三点である。
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