北海道・余市町にあるフゴッペ洞窟の岩面刻画を北東アジアのコンテクストに明確に位置づけるために、北東アジアの類例を検討する必要があり、そのための現地調査を行うことが、本研究の第一の目的であるが、20年度には、鹿児島県・徳之島において、戸森の線刻画など数カ所の遺跡を実地に共同調査することができた。これらの遺跡の作品は、金属器を用いて刻まれた、シャープな印象を与える、舟などの線刻画であり、制作年代は紀元後1200年頃旨とそれほど古くはないが、フゴッペと同じ舟のモチーフがきわめて興味深い。 また、台湾では萬山岩雕と呼ばれる遺跡を中心に展示した、台北近郊の十三行博物館の特別展を共同視察することができた。先史岩面画博物館を構想することが、本研究の第二の目的であり、先史岩面画の斬新な展示方法に学ぶところが多かった。萬山岩雕遺跡それ自体は台湾南部の急峻な山地の中にあり、今回は日程上の問題もあり、情報収集をするだけで、現地調査はかなわなかったが、今年度以降、機会を得て、実際に赴く予定である。 研究代表者の個人調査としては、21年度の共同調査のための中国における情報収集と、フィールド・ミュージアムの事例研究として、エジプト南西部のギルフ・ケビール台地の遺跡群の調査を行った。また、年度末には、鳴門において、数名のメンバーによる総括の研究会を開催した。
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