7月には、山形県酒田市沖合の日本海にある飛島に、岩面線刻画があるとの情報を得て、急遽、共同で現地調査したが、残念ながら作品の明確な痕跡は確認できなかった。8月には、北海道枝幸町において、「謎の岩面刻画:フゴッペ洞窟」という研究集会を北海道開拓記念館と共催し、共同研究のメンバーが各自、この科研の現地調査で得られたデータをもとにして研究の成果を発表した。また、1950年に発見されたフゴッペ洞窟・岩面刻画の、確認当時の状況の調査結果も発表された。10月には、研究実施計画にもとづいて、中国において共同で現地調査を行った。具体的には、黄河上流域、内陸部の寧夏回族自治区の銀川市近郊の賀蘭山遺跡群および中衛市近郊の大麦地遺跡群、さらには内蒙古自治区の卓子山遺跡群を集中的に調査した。その際、銀川世界岩画館などの現地研究機関の支援により、より充実した内容で北東アジアの先史岩面画の現況を知ることができた。また、銀川市に新設された寧夏博物館で先史岩面画の最先端の展示に触れ、今後の博物館構想のための興味深い知見を得ることができた。11月には愛媛県久万高原町に分布する上黒岩岩陰遺跡と隣接する資料館で共同調査した。1月には、次年度に開催する国際研究集会などの打ち合わせを兼ねて、上黒岩遺跡から発見されている線刻礫に関する研究発表会を東京芸術大学において行った。4年計画の2年目であり、論文発表などの具体的な成果はまだない。
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