研究課題/領域番号 |
20242008
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
中川 裕 東京外国語大学, 大学院・総合国際学研究院, 教授 (70227750)
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研究分担者 |
佐野 洋 東京外国語大学, 大学院・総合国際学研究院, 教授 (30282776)
望月 源 東京外国語大学, 大学院・総合国際学研究院, 准教授 (70313707)
降幡 正志 東京外国語大学, 大学院・総合国際学研究院, 准教授 (40323729)
鈴木 玲子 東京外国語大学, 大学院・総合国際学研究院, 教授 (40282777)
匹田 剛 東京外国語大学, 大学院・総合国際学研究院, 准教授 (80241420)
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キーワード | 言語学 / 音声学 / 音韻論 |
研究概要 |
5月~6月に上海語の声調、琉球方言の分節音に関する研究成果の発表を国際学会および国内学会、研究会で行い、専門家からのフィードバックを得た(研究協力者の高橋康徳、青井隼人)。 7月中旬にベルリン大学のコイサン語学者トム・グルデマン教授を東京に招き、南コイサン語族の最新の分析結果について教示をうけ、討議を行った(中川)。また、7月下旬にはコイサン諸語の声調および分節音に関する研究成果の一部をコイサン言語学国際シンポジウムおよび国際歴史言語学会でおこない、ひろくコイサン諸語専門家や歴史言語学の専門家との討議をする機会をえた(中川)。さらに8月には国際学会で来日中のコイサン言語学者(ライプツィヒのマックスプランク進化人類学研究所研究員でホアン語≠Hoanの専門家のLinda GerlachとFalko Berthold)を東京に招き、ホアン語の音声的な最新調査結果について情報を提供してもらい、中川による素性設定の仮説について討議した。これにより、子音2大音類の下位区分とそれぞれの分布の平行性についてのコイサン横断的な理解を共有することができ、本研究課題に大きな前進があった。 2011年度は本研究課題の大きな成果であるラオ語の声調に関する総合的な研究が、研究協力者の柳村により博士論文として完成された(2012年3月提出)。同論文では聴覚・音響的な声調の特性の精査と歴史的声調変化の把握から声調素性の設定を探求する章が含まれ、これは本研究課題の直接の成果のひとつでもある。 以上の他に、本研究の応用的領域に関わる成果を踏まえた言語学習書(分担者による)や音声学入門書(代表者による)が出版された【13.研究発表の欄参照】。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論的側面では代表者と4人の研究協力者を中心として、分節音的特徴についてもプロソディー特徴についても、コイサン諸語、中国語方言、ラオ語、琉球方言を事例としながら成果が具体化してきている。一方、応用的側面でも音韻的に多様なL2事例(朝鮮語、インドネシア語、ベトナム語、カンボジア語、ロシア語)に基づく具体的な新しい知見がもたらされた。そこから言語教育学への貢献が分担者の佐野を中心に探求されている。
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今後の研究の推進方策 |
ほとんどの個別言語の調査研究は順調であり、理論的考察も予定通り進み、また応用的研究への展望もいくつかの言語で教材作成の過程で具体的になってきているので、今後も現在の指針どおりに調査研究を遂行する。最終年を迎えてひとつ新しい取組みとして、ロシア語研究班にロシア語母語話者の研究協力者を迎え、L2としてのロシア語の音声に読み取ることのできる聴覚音声学的に重要な特徴の特定のために、ロシア語学習者(2年目、3年目以降)を対象とした組織的データ収集と分析を分担者の匹田と計画し、6月から実施する。その成果は年度内には具体的になる見込みである。
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