(1)日本近世は、日本列島において初めて商業出版が成立し、版本と写本とが流通し読まれ書写された時代である。本研究は、書物・出版と社会との相互的関係の様相を追究する研究を「書物・出版と社会変容」研究と呼び、古代・中世から近現代までを射程に入れて、日本における書物・出版文化の歴史的位置を総合的に研究していこうとするものである。くわえて「書物・出版と社会変容」研究を軸にすることにより、どのような日本史像が見えてくるのか、研究の可能性を見通したい。さらに、「書物・出版と社会変容」研究が、日本史学だけでなく、広く人文諸科学研究にどのようなインパクトを与え得るのか、その可能性も追究したい。本研究の課題である。 (2)書物・出版と社会との相互関連を解明するために、8つの研究項目班を設定して、班ごとで個別事例研究を深める。 (3)研究項目班とは別に、9つのフィールドワーク班を設定し、専攻を異にする研究者が共同で日本各地の資料の発掘・整理を行う。 (4)「書物・出版と社会変容」研究会を年6~8回開催する。個別の研究報告・討論に加え、研究項目班とフィールドワーク班からの成果報告も行う。 (5)「書物・出版と社会変容」研究会を東京以外の各地に会場を移し開催する。各地の書物・出版に関心を有している研究者と交流するとともに、現代までの書物・出版文化までを視野にいれた市民向けの講演会を年に1回企画し、研究成果を社会に向けて発信する。 (6)研究会誌『書物・出版と社会変容』を毎年2巻印刷するとともに、プロジェクト報告書も適宜刊行する。また、研究者・学生・一般市民も対象とした、講座ものの図書や新書等を積極的に利用して、研究成果を広く発信する。
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