研究課題/領域番号 |
20242022
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
小畑 弘己 熊本大学, 文学部, 教授 (80274679)
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研究分担者 |
高瀬 克範 北海道大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (00347254)
高宮 広土 札幌大学, 文化学部, 教授 (40258752)
宮ノ下 明大 農業・食品産業技術総合研究機構, 食品総合研究所, 食品害虫ユニット長 (30353949)
百原 新 千葉大学, 大学院・園芸学研究科, 准教授 (00250150)
宇田津 徹朗 宮崎大学, 農学部, 准教授 (00253807)
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キーワード | 圧痕法 / 大陸系穀物 / 雑穀 / 稲作 / 縄文時代 / 東北アジア / 貯穀害虫 / 家屋害虫 |
研究概要 |
日本列島における大陸系穀物の流入時期を確定するために、資料汚染のない年代的に確実な資料を提供する「圧痕法」を用いて、縄文~弥生前期の栽培関連資料を確実なものとし周辺諸国との比較を行うというのが本研究の主目的であった。以下のような4点の成果を得た。 1.圧痕法で得られた縄文後半~弥生前半の穀物資料は、ほぼ全国的な圧痕調査により、縄文晩期末~弥生初頭に、朝鮮半島の青銅器前期~中期の複合的な作物栽培をもつ農耕文化がセットとして移入された姿を示した。これは縄文後期後半におけるイネの存在をまったく否定するものではないが、それがきわめて小規模であり、生業に占める割合が低かったことを示している。また、この時期は土地や気候条件に応じて、畠作の比重が高い場合があり、「弥生時代の拡散=稲作の伝播」という図式ではなく、地域ごとの選択的受容によって多様な栽培形態があったことを立証した。 2.朝鮮半島最古のキビ・アワ圧痕を検出し、朝鮮半島南部における華北型の雑穀農耕が既存説より1500年ほど遡ることを立証した。これは中国東北部や沿海州などの新石器文化においても再検証が必要であることを喚起する事例である。また、日本の圧痕例からみて、この華北型雑穀農耕の主栽培穀物であるアワ・キビは同時期に日本列島に入ってきていない可能性が高くなった。 3.琉球列島の栽培穀物の流入時期を土器圧痕によって10世紀ごろと想定した。これはこれまで炭化穀物で証明されていたが、これが土器圧痕によって検証できたことは、今後、当地域においても本手法によってさらに古い資料を検出できる可能性を示したといえる。 4.稲作とともに伝来したと考えられてきたコクゾウムシは、鹿児島県三本松遺跡での1万年を遡る事例の検出とその後の各地での調査によって、貯蔵堅果類を加害した家屋害虫であり、イネ伝来とは無関係である可能性がさらに強くなった。
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