研究課題/領域番号 |
20242023
|
研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
北條 芳隆 東海大学, 文学部, 教授 (10243693)
|
研究分担者 |
河野 裕美 東海大学, 海洋研究所, 准教授 (30439682)
田崎 博之 愛媛大学, 法文学部, 教授 (30155064)
ハドソン マーク 西九州大学, リハビリテーション学部, 教授 (20284052)
|
キーワード | 先島地域 / 先史社会 / 狩猟採集社会 / 水稲農耕社会 / 環境 / 自然災害(津波)痕跡 |
研究概要 |
(1) 沖縄県西表島網取遺跡の発掘調査では、初期水田遺跡の水源・供給施設の全体構造解明を目的として調査を実施した。その結果、溜井とその堰堤となる石積みを検出し、併せて用水路の取水施設を確認できた。石積みは17世紀代の4a層田面に対応する。さらに石積みの下面は津波痕跡で覆われており、その直下に15世紀から16世紀後半の田面と推定される5a層が確認された。すなわち網取遺跡における初期水田跡は中世に遡ることと、近世の水田開発との間には津波による水田遺構全体の破壊を介在する、という歴史的経緯が内在する可能性が高いことが明らかとなった。出土遺物にも恵まれ、放射性炭素年代測定結果を補強する材料を入手できた。このような津波痕跡の検出は環境と人類との相互作用の解明を目指す本研究にとって、予想外の展開に結びつくものであり、きわめて重要である。 (2) 宮古島長墓遺跡の調査成果については、網取遺跡の先史時代貝塚における貝種の組成との比較検討をおこなうべく、全点の同定・計測を実施し、復元される漁労形態を生息域との関係のもとに整理した。その結果、先史時代においても交易に特化した漁労が存在した可能性が浮き彫りになった。 (3) 沖縄県西表島祖内遺跡の発掘調査では、中世に遡る水田跡を確認した。目下年代・花粉分析等の分析を進めながら、検出遺構の性格を追求中である。 (4) 八重山諸島、特に西表島における近世の水稲農耕の拡大・維持、農業形態の変遷、さらに放棄による乾燥化など、人間活動等に伴う湿地環境の変遷を背景に、それらの環境に生息するゲンゴロウ類の水生生物相や水鳥相の現状を明らかにした。また水稲栽培を行う海岸集落に生息する大型オカヤドカリと漁労採集生活によって投棄される貝殻の宿貝利用との関係を明らかにした。
|