研究課題
バンダアチェにおいてフィールド調査を行い、統計資料や行政文書の収集、事例村落における復興状況の定点観察、NGO担当者などへの復興支援に関するインタビュー、被災者の緊急対応に関するインタビューなどを行った。名古屋とバンダアチェで、インドネシア側の研究協力者とワークショップを開いて中間成果について議論するとともに、若手研究者に対する社会調査法のセミナーを行った。また日本の津波常襲地において、地域に根差した津波対策の社会的成立条件について調査するとともに、現地セミナーでインド洋大津波の教訓に関する情報普及を図った。その結果、(1)津波被害の根本原因が基本的に津波の挙動メカニズムと地域の自然地理的条件にあるが、1970年代以降の無秩序な市街地拡大が貧困者層の被災の要因となったこと。(2)激甚被災地では、住宅復興が進む一方で空き家が増加する傾向にあり、地元コミュニティの復興計画と支援組織の戦略との乖離や、草の根支援を実践してきたNGOと津波後の新興支援団体との間で矛盾がそこに密接に関わること。(3)地方政府の政策レベルでは、津波と紛争からの復興がリンクし、それら二重の剥奪によって経済格差が拡大する可能性があること。(4)被災体験に関する被災者自身の語りの中に津波に関する知識や備えに関わる災害文化が欠落していること、また3年以上が経った現在でも津波に関する恐怖の記憶が将来への不安を招き、それに対する公的支援が皆無であること。(5)地域に根差した津波対策の概念化を図り、その成立条件の根幹に災害文化があることなどを明らかにした。これらの中間成果については、学術雑誌や学術書、国内外の学術会議で発表した。
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Journal of Natural Disaster Science 29
ページ: 53-61