研究課題/領域番号 |
20243005
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小畑 郁 名古屋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (40194617)
|
研究分担者 |
戸波 江二 早稲田大学, 法務研究科, 教授 (00155540)
北村 泰三 中央大学, 法務研究科, 教授 (30153133)
建石 真公子 法政大学, 法学部, 教授 (20308795)
江島 晶子 明治大学, 法科大学院, 教授 (40248985)
本 秀紀 名古屋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (00252213)
|
キーワード | 国際公法 / 憲法 / 国際人権法 / EU法 / ヨーロッパ人権条約 / ヨーロッパ人権裁判所 / ヨーロッパ司法裁判所 |
研究概要 |
1.研究代表者・分担者および連携研究者で組織する研究会を3回(5日)開催し、主として、ヨーロッパ人権裁判所(一部ヨーロッパ司法裁判所)の選定した判例の個別的検討を行った。これらの作業とも関連させて、『ヨーロッパ人権裁判所の判例II』の刊行準備作業を本格化させ、判例の1次的な選定作業を終えた。一部については、分担者も決定した。また、ハンガリー・チェコ・オーストリアを訪問し、人権条約およびEU法と各国憲法・憲法裁判所の相互作用について、憲法裁判所裁判官・調査官や関係の研究者と研究交流し、聞き取り調査を行った。 2.このような作業を通じて、次のような中間的所見が得られた。 (1)グローバル化とそれとも関係する多文化社会状況のなかで、新たな問題が発生し、国内裁判所・人権裁判所(EU裁判所)の双方が困難な判断を迫られていること。たとえば、国家内に浸透的に展開する国際機関の活動に伴う人権侵害をめぐる問題、公教育の宗教的中立性原理に対する個人の宗教的人格権に基づく挑戦といった問題である。 (2)ヨーロッパの多層的な人権(基本的)保障制度が、「層」相互の協調と競合の両面を持ちながら、一元化するのではなく、それ自体として定着しつつあること。たとえば、リスボン条約による統合の一層の進展に対して、各国は自国の憲法原理の自律性を強調しながら、受容しようとしている。また、国内裁判所の判決と齟齬する人権裁判所の判決について、大きな議論が巻き起こりながら、後者の一方的な排斥にはつながっていない。 (3)ヨーロッパ人権条約システムの構造的問題の面では、人権裁判所の判決執行の問題が焦点となっており、それにかかわるさまざまな試みが展開していること。たとえば、パイロット判決方式が採用されたが、状況によりさまざまなヴァリエーションが生まれている。第14議定書の発効後もさまざまな改革の議論がなされている。
|