研究課題/領域番号 |
20243005
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小畑 郁 名古屋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (40194617)
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研究分担者 |
戸波 江二 早稲田大学, 法務研究科, 教授 (00155540)
北村 泰三 中央大学, 法務研究科, 教授 (30153133)
江島 晶子 明治大学, 法務研究科, 教授 (40248985)
本 秀紀 名古屋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (00252213)
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キーワード | 国際的人権保障 / 憲法的基本権保障 / ヨーロッパ人権裁判所 / EU / 国際研究者交流 / 多国籍 |
研究概要 |
本年度は引き続きヨーロッパ人権裁判所(および必要に応じてEU司法裁判所)の判例の動向をレヴューしつつ、研究のまとめを意識して、とくに次の諸点を重点的に研究した。 まず、上記の裁判所の判例を基礎としてヨーロッパ・レヴェルで形成されつつある「憲法秩序」と各国国内の憲法秩序との、相互関連を明らかにすることに努めた。具体的には、オーストリア、ハンガリー、チェコ、ドイツの状況について、「重層的基本権保障」をキーワードに、日本との比較を交えつつ明らかにする国際シンポジウムを開催した。ここでは、苦悩や軋轢を生みながらも、長期的には、ヨーロッパ・レヴェルでの判例に従っていくことが、ほとんど避けられない選択肢になっていることが、明らかにされた。 また、リスボン条約とヨーロッパ人権条約第14議定書の発効を受けて始まったEUのヨーロッパ人権条約加入交渉をレヴューした。ここでは、EUレヴェルでの正統性ないし基本権保障の「赤字」を埋めるために加入がどうしても必要とされている一方で、EU法秩序の高度の「自律性」への固執が、これを困難にしていることが明らかにされた。 さらに、国連レヴェルで展開している国際社会による公権力行使については、セーフガードとして基本権保障を組み込むことが、ヨーロッパ法秩序の要請として譲れない一線であることが、EU司法裁判所のカディ事件判決により明らかにされた。本研究では、これが、ヨーロッパ・レヴェルでの基本権保障制度を必要とする要因の一つであるとともに、国連やヨーロッパ域外諸国との関係では緊張を生む可能性があることが指摘されている。 総じて、ヨーロッパ地域における基本権規範が、各国の憲法秩序との関係で軋轢を生みながらも尊重されているのは、グローバル化の圧力の下、ヨーロッパ諸国が共同で自律性を維持しながらその正統性を確保しようとする装置としてである、という仮説が得られた。
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