研究課題
我が国では、安心・安全な社会の必要性が唱えられている。特に重要なのは患者と医師との間で紛争が生じた場合にどのように患者を救済してゆくかである。医療紛争は、当事者間の直接交渉か、あるいは民事裁判による解決の途しか存在していないが、原因究明や再発防止策などの医療安全を担保することは期待できない。そこで本研究は我が国における新たな医療紛争を解決する仕組みの構築を目指している。従来の研究は、理念や諸外国における制度を紹介することに終始し、我が国における医療従事者の現状を科学的に分析するという最も基本的な観点が十分であったとは言い難い。我々は、2009年に医師に対して、医療紛争に関する意識調査をインターネットで行っている(詳細は、我妻学「医療紛争に関するインターネット調査」法学会雑誌50巻2号1頁以下(2010)参照)。2010年は、インターネット調査の結果をふまえて、質問項目を見直した上で医師および看護師に対して、郵送による医療紛争に関する意識調査を行っている。合計2,000件を入力し、2011年に分析作業を行っている。2010年9月~2011年3月まで、研究代表者の我妻は、ハーバード大学ロースクールのPetrie-Flom Centerで、主として医療紛争の日米比較研究を行い、Glenn Cohen准教授、Eric Feldman教授などと意見交換をし、2012年3月に再度意見交換をしている。2011年には、産科医療補償制度の原因分析報告書の事例の概要、脳性麻痺発症の原因および臨床経過に関する医学的評価などの分析から医療紛争にいたる経緯を分析している。これらの研究に基づいて、医療安全講習会を通じて医療従事者への啓蒙活動を行うと共に、医療紛争に関して患者と医療従事者に対して、できるだけ具体的なモデルを早期に示したい。
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民事訴訟法雑誌
巻: 58号 ページ: 29-54
医療薬学
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東北学院法学
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医療の質・安全学会誌
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巻: 第6巻第3号 ページ: 332-345
日本医療・病院管理学会誌
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アメリカ法
巻: 2011 ページ: 263-266