本研究は、グローバル化が、どのような国内政治的反応を生み出しているのかを一般市民意識の分析と政治・経済アクター(政治家、官僚、企業、利益団体)の態度及び行動の分析を組み合わせることで体系的、総合的に解明することを目指している。研究の第1年度である本年度は以下の3つの活動を行った。第1に、理論的検討である。本研究は国際政治経済学に属する研究であるが、問題関心を共有しつつ独自の学問領域をなしている国際経済学の研究動向を踏まえた研究遂行を目指して、国際経済学者を招いてのワークショップを開催し意見交換を行う一方で、研究協力メンバーの直井恵をハーヴァード大学におけるHarvard Globalization Survey(HGS)チーム会議に派遣しそのメンバーと調査設計具体案のすり合わせ及び同調査の理論的意義の検討を行い、それを踏まえて国内ワークショップ・研究打ち合わせ会合を数次にわたって開催した。第2に、世論調査による一般市民のグローバル化に対する態度の調査及びその調査データを用いての態度形成メカニズムの分析を行った。この世論調査は、通常の世論調査ではなく、消費者・生産者アイデンティティー刺激を与える実験を組み込んだものとするためにインターネットを用いたサーベイとした。その分析結果については、日経新聞及び国内外の国際研究会議において発表を行った。第3に、グローバル化に対する政治エリートの態度形成についての調査を進めるための準備作業を行った。具体的には、国会議員へのサーベイ調査、官僚へのサーベイ調査を、過去のエリートサーベイ調査の質問文を検討しつつ設計する作業を行った。その際に、国会議員サーベイにおける回収率の低さが大きな研究上の障害となりそうなことが予想されたので、国会議員調査については読売新聞政治部との共同調査の体制をとり、調査に向けての準備を進めた。
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