本研究は、国境を越える貿易、投資、人間や情報の移動の劇的な増大、すなわちグローバル化に対する政治的反応はどのようなメカニズムを通して生じているのかを体系的、総合的に解明することを目指している。本年度は、以下の3点につき研究を進めた。 1)政治家と一般選挙民が持つグローバル化への政策選好の関係の解明 2009年11月から12月に行った国会議員調査で回答を得た159名の小選挙区選出衆議院議員の政策選好とそれらの議員の選挙区民各100名(総計15900名)に対する調査データをリンクさせて、両者の関係の分析を行った。そこでは、政治家と選挙区民の政策選好一般には強い関連は見られない一方で、貿易自由化に対する態度には有意な相関が見られること、農産物の自由化について選挙区における農業人口比や農業生産額などとの間には有意な関係がないなど興味深い知見が得られた。 2)企業のグローバル化に対する態度調査 これまで本プロジェクトでは、政治家及び一般市民のグローバル化への態度につきデータを構築して、その分析を行ってきた。2010年度は、残る重要な社会経済アクターである企業のグローバル化に対する態度につき調査することを目指した。そのため、質問内容、調査方法などにつき専門家への聞き取り、先行研究の調査などを進め、最終的に調査会社である帝国データバンクの持っている企業モニターを利用しての調査を設計し、実施した。その後、それら調査対象企業のデータを収集しサーベイデータとの連結を行いデータ構築に当たった。 3)国際比較研究への展開 本プロジェクトは当初より国際的な比較を展望してきた。本年度も、アメリカ、韓国などでの研究会発表、ヨーロッパでの聞き取り調査などを行い将来の研究発展の可能性を追求した。
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