本研究は、国境を越える貿易、投資、人間や情報の移動の劇的な増大、すなわちグローバル化が、どのような国内政治的反応を生み出しているのかを一般市民意識の分析と政治・経済アクター(政治家、企業、利益団体)の態度及び行動の分析を組み合わせることで体系的、総合的に解明することを目指して遂行してきた。 最終年度である2011年度の研究成果は以下の通りである。 1)2010年度末に行った約2100企業に対するサーベイ調査データを用いて企業がどのような形でTPPに対する態度を形成しているかを分析した。そこでは、企業の業態や業績などの客観的な要因によってのみならず、その企業所在地における政治的状況(地方政治におけるTPPへの賛否状況の差異)によってその態度が影響されることを解明した。 2)2011年12月に労働組合のTPPに対する態度につきサーベイ調査を企画実施し、77団体から回答を得て、各組合の属性と態度の関係について一次分析を実施した。そこでは、TPPへの態度が、組合間で大きく異なること等を確認した。 3)2012年1月に約3800人の一般有権者を対象に、サーベイ調査を行った。そこでは、貿易の自由化によって被った負の影響に対して政府がどの程度補償を行うべきかに関する態度がどのような要因によって決まるのか、また、そのような補償への態度は自然災害による被害の場合や、より一般的な損失の場合とどのように異なるか、さらには補償対象が農業の場合、製造業の場合での違い等を実験調査を組み込んでの解明を試みた。そこでは、回答者の個人属性に加えて、政治的、経済的知識や認知がその態度形成に重要な影響を及ぼすという一次分析結果を得た。 4)これまでの成果を踏まえて、研究協力者を集めての合同研究会を開催するとともに、今後の国際比較研究の可能性を探るために、本報告書後掲のような国際的情報発信を行った。
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