研究課題/領域番号 |
20243010
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松浦 正孝 北海道大学, 大学院・公共政策学連携研究部, 教授 (20222292)
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研究分担者 |
山室 信一 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (10114703)
中島 岳志 北海道大学, 大学院・公共政策学連携研究部, 准教授 (40447040)
宮城 大蔵 上智大学, 外国語学部, 准教授 (50350294)
大賀 哲 九州大学, 大学院・法学研究院, 准教授 (90445718)
浜 由樹子 津田塾大学, 国際関係研究所, 研究員 (10398729)
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キーワード | アジア主義 / 地域主義 / ネットワーク / アジア観 / 植民地主義 |
研究概要 |
四年度目にあたる本年は、アジア主義にとって極めて重要なテーマでありながら、ゲスト・スピーカーの都合で実現しなかったイスラーム要因とアジア主義との関係についての研究会を北海道大学で行った。2011年6月4日から5日にかけて行った研究会では、まずジェミル・アイドゥン(当時ジョージ・メーソン大学、現在ノースカロライナ大学チャペル・ヒル校)"The Question of the "Muslim World" in Global Pan-Asian Thought"という基調報告を受けて、臼杵陽(日本女子大学)が「嘆きの壁」事件を手がかりに、汎イスラーム主義と汎アジア主義との関係について報告とコメントを行った。続いて、三沢伸生(東洋大学)「戦前・戦中期日本におけるアジア主義とイスラーム主義の交錯」、シナン・レヴェント(早稲田大学大学院)"Comparative Analysis on Turanism in Turkey and Japan (1920-1945)"という、徹底的に史料に基づいた日本のアジア主義とイスラーム側との交渉についての報告と、トゥラン主義についてのスケールの大きな報告が行われた。これらと、それらをめぐる極めて活発な議論によって、本研究の大きな欠落は補われ、新たなアジア主義論が生まれつつあることが実感された。この後、ホームページのBBSとメールを利用した議論が続けられると共に、理論班による本格的な理論化も試みられた。各研究者による執筆も進められ、特に英文・中文による論文については、研究分担者や研究協力者、ODや博士課程大学院生らによる翻訳とその検討・修正・調整が進められ、翻訳についての執筆者との調整も進められた。これはかなり難渋する作業であったが、ほぼ一通りの草稿が集められ、最終年度における論文集のブラッシュ・アップと刊行への道筋が見えてきたと言うことができる。その一方で、個々のメンバーによる国内外での学会報告・論文刊行なども進められ、別表にあるように、成果が公開された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、2008年以来、3年度目までに各年度2回ずつ、2011年に1回、世界各地からのゲストを交えた濃密な研究会を行ってきた。それによりほぼ当初の予定通り、各地域や各要因について議論することができ、残っていた重要な課題であるイスラームについても、2011年に充実した研究会を持つことができた。多種多様な事例をどのように理論化するかという、当初から予想されていた課題の処理と、論文集の刊行実現が残されている。
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今後の研究の推進方策 |
最終の5年度目は、アジア主義とは何かについて、ある程度堅固な理論化を進めるのか、あるいは、当初予想されていた通り、多種多様な事例から豊饒なファクターやインプリケーションを引き出し、今後の研究の課題・指針として示すのか、ということを選択する。その上で、決まった方針に基づき、各メンバー・執筆者がそれに沿った論文の修正や再検討を行い、刊行の話が進んでいる出版社から論文集を出版する作業を進め、年度中に刊行して、研究成果を世に問う方針である。年度内の刊行が間に合えば、合評会をある程度オープンな形で行い、本研究の問題点や今後の課題、発展させるべき論点などについて大いに議論したい。また、本研究をもとにしたアジア主義・アジア地域主義研究を、各メンバーがさらに掘り下げ、広げて、発表したい。
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