本本研究の目的は、国際関係論の重要分野である秩序についての研究をすすめつつ、マルチエージェントシミュレーション技法の可能性を追求することである。シミュレーションモデル分析と実証研究を具体的に関連づけながら、国際政治秩序変動の解明をめざしている。 (A)(1)国際関係論でのこれまでのマルチエージェントシミュレーション研究の問題点の批判、(2)にも関わらずこの技法がもつ大きな可能性の指摘、そして(3)研究計画全体のありかたについて提言については、学会で発表し学術論文として公表することができた。 (B)本研究では、(1)「合意形成」(2)「人工国家」(3)「国際社会」それぞれの問題領域において、モデル分析と実証研究を進める。(1)合意形成については、政府内での意思決定についてのモデルの構築とシミュレーションをすすめており、近く公表できる段階にある。(2)人工国家についても、アフリ力諸国の国民統合と分離運動についてのモデル構築が進んでおり、またナショナリズム運動についてのモデル構築も完了し、近く公表できる段階にある。(3)国際社会については、近年の国際関係論において大きなテーマとなっている国際規範変動についてのモデルを構築し、具体事例に基づいた実証研究と関連づけ、学術論文として公表した。さらに国内体制と平和の関係について探求するモデルの構築を新たに始めている。 (C)シミュレータについても、組み込み関数やインターフェイスを改良することにより大幅な機能強化を行うことができた。
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