本年度の研究実績は、研究発表にもあるとおり、査読つき雑誌への掲載(もしくは掲載決定)が、3本(ほか、そのもととなるWorking Paper)となり、本研究の主要なテーマである、高頻度データの分析を大きく前進させることができた。とくに、日本のマクロ経済変数の公表時刻前後の為替レートの動きの分析は、この分野での最先端の成果を上げることができた。これまで為替レートに影響をもたないと思われていた変数も、より精密な(取引システムの1秒単位の)データに基づいて分析すると、影響を与えていた、との結論を得ることができた。(以上、研究実施計画の(A)と(E)、研究論文の1と2)。これまでの文献における、為替レートの変動はランダム・ウォーク仮説を棄却できない、という通説を覆すような研究が、為替レートのトレーダーの行動の理論化と、為替レート取引の連(run)の研究である。そこでは、精密な高頻度データを用いることで、ランダム・ウォークを明確に棄却して、統計的に有意な連の存在を示した。換言すると、為替レートの動きには、モメンタムがあることを示した。この結果は、モメンタム・トレードを行うといわれている実際のトレーダーの行動の合理性を示唆している。(研究実施計画の(B)と(D)、研究論文の3と4)。このように、理論と実践のギャップ、つまり為替レート変動のこれまでパズルと思われてきた部分についての解明(研究の目的)を一歩進めることができた。
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