研究課題/領域番号 |
20243021
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
乾 友彦 日本大学, 経済学部, 教授 (10328669)
|
研究分担者 |
権 赫旭 日本大学, 経済学部, 准教授 (80361856)
戸堂 康之 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (30336507)
松浦 寿幸 慶應義塾大学, 産業研究所, 専任講師 (20456304)
|
キーワード | 経済政策 / アウトソーシング / 生産性 |
研究概要 |
本年度は経済産業研究所における「東アジア企業生産性」プロジェクトと有機的に連携して研究を行った。乾・戸堂は中国国営企業の民営化と輸出の関係を研究し、民営化は生産性と企業規模の増加を通じて輸出性向を引き上げ、長期負債の減少を通じて輸出性向を引き下げることが判明した。しかし、これらの経路を通じた民営化の効果は量的にはわずかであり、既存のデータには表れない企業特性、たとえば民営化によって利益やリスクに対する企業の姿勢が変化することによって引き起こされていると結論づけることができた。乾・松浦は日本企業がアジアの低賃金国等へアウトソーシングし、これらに基づく輸入の増加が日本国内の製造業の事業所のダイナミクスに与える影響を分析した。この分析の結果、低賃金国からの輸入競争が事業所の雇用成長率に負の影響を与えるが、事業所の生産性が高くなるほどその影響は小さくなることと、グローバリゼーションの高まりとともに川上産業集積や産業内集積が事業所の雇用成長率の上昇や工場閉鎖確率の低下に強く影響を与えていること等が明らかとなった。また乾は日本・中国・韓国・台湾企業の生産性の国際比較の結果を公表した。加えて乾は日本の金融機関の効率性や情報生産機能が、日本企業の輸出行動に与える効果を分析し、相対的に高いキャッシュフロー制約に直面している企業の「生産性に対する輸出確率の感応度」が、主要取引銀行の効率性上昇に伴って、統計的及び経済的に意味のある水準で上昇する事を実証的に確認した。一方で、こうしたメカニズムは、輸出額の決定及び輸出ステータスの継続には影響を及ぼさない事も確認された。日本の金融機関の情報生産機能も企業の輸出開始に重要な影響を与えるとの分析結果も得た。これらの結果は、顧客企業の輸出開始時点におけるサポートに、主要取引銀行の主たる役割が認められることを示唆している。
|