研究概要 |
2008年度に行った研究活動の主なものとして, 研究代表者による「プロセス志向企業(Process Oriented Enterprise-POE)」モデルの提案があげられる。このモデルは, プロセス志向土壌, プロセス志向組織, プロセス志向実践の3階層からなっており, 各階層におけるプロセス志向活動が高いほど, ICTを利活用することができるという仮説が導出されるものとなっている。飯島は, このモデルにもとづき, 『プロセス志向イノベーション推進会議』という会議体を日本BPM協会と立ちあげ, その議長として活動をリードし, 9月には大規模な実態調査を実施した。この調査結果を分析したところ, プロセス志向度の高い企業は, そうでない企業に比べて, 売上高成長率, 利益率ともに業界内で比較優位にあり, また, そうでない企業に比べるとICTを有効に活用していることが, 顕著に現れる結果が得られた。これについては, 2月に開催したシンポジウムで発表し, 大きな反響があった。また、組織面では, 平成19年に申請者のグループが行った組織特性アンケート調査と公表業績データを用いて, 企業の業績は, 組織成員の能力(平均給与で代理)よりも組織の性能(組織IQで測定)の影響を強く受けていることを実証的に示した。このことは, IT投資と経営成果との関係を論ずる際, IT投資の成果が組織成員の能力(たとえば, ITリテラシー)よりも組織特性により強く影響されるという主張の裏付けとなるもので, 本研究計画の基本的な枠組み上確認しておく必要があった。
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