本研究の目的は、会計の最終章である財務報告を変革するとすれば、過去の財務報告のどの点を継承し、またどこをどのように変革しなければならないのかについて検討することである。 本研究は、その問題意識や研究の視点、財務報告の意義等について検討を行った結果、次の分析を行った。その内容は、次のとおりである。 分析の縦糸として、まず、わが国の財務報告を測定情報別、機能別、チャネル別、会計単位別、公開・非公開別、報告対象別、報告媒体別、報告機関別、情報の性質別およびセクション別の制度の視点から棚卸しを行い、何を継承し、また何を変革しなければならないのかについて明らかにした。次いで、わが国の企業会計制度と財務報告の何を継承し、何を変革しなければならないのかについて明らかにした。さらに、アメリカ、EU、イギリス、フランス、ドイツ、IASB、OECD等の財務報告についても詳細に分析し、その知見を明らかにし、わが国は今後かかる欧米等の財務報告から何を学ばなければならないのかについて明らかにした。 また、分析の横糸として、実証分析の視点から、まず、情報の適時性と開示方法が財務報告の有用性に及ぼす影響を考察するとともに、電子開示システム導入の効果に関する先行研究をサーベイし、わが国における当該研究の必要性を指摘した。次いで、非財務情報の有用性に関する先行研究にもとづいて、わが国の財務報告を前提とする非財務情報の有用性に関する実証研究を行うための道筋を明らかにした。
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