本研究の目的は、美術家の創作プロセスに関する心理学的検討を通じ、芸術創造の認知モデルを構築すること、及びその知見に基づいて、芸術系学部での創造性教育支援プログラムを開発することである。美術創作プロセスの解明は、これまで科学的な検討がほとんど行われていなかった。そのため、その実証的な検討とその成果に基づいた教育支援プログラムの開発は、学術的にも教育的にも大きな意義を持っていると思われる。本研究プロジェクトでは、そのような目的の達成のために、初年度は3人の美術家を対象に、インタビュー、美術創作プロセスのビデオ記録、フォースプレートによる描画データ収集、眼球運動データの収集等を行った。この研究は現在も継続中であるため、まだ結論は出ていないが、一部の予備的成果は、研究代表者が東京大学駒場博物館で企画した企画農「behind the seen:アート創作の舞台裏」の中で、一般に公開された。来館者へのアンケートからは、この企画が非常に好評であり、多くの来館者が「芸術創作プロセスの理解が深まり、創作への動機付けが高まった」という感想を持ったことが明らかになった。これは、本研究プロジェクトの社会貢献の一つとして評価できるだろう。また、この研究プロジェクトに関連する研究成果の一部は、Analogical modification in the creation of contemporary art.というタイトルで、英文誌Cognitive Systems Researchにも論文として掲載された。
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