研究課題
長期記憶形成のプロセスを捉えるため、ラットによる遅延条件性音-位置連合記憶課題を開発した。この課題は、音の高低と反応する穴の位置の関係に関する長期記憶を形成する課題である。また、行動と神経活動のより明確な相関関係を調べるためのコントロール課題として、運動テスト課題と感覚テスト課題も開発した。運動テスト課題により、遅延条件性音-位置連合記憶課題の反応期間中の神経活動が右または左の単純な特定の空間的位置への運動成分を反映しているのか、それとも連合記憶の情報処理を反映しているのかを判断することが可能となった。また感覚テストでは、本課題中での音呈示期間中の神経活動が単純な感覚応答によるものか、それとも連合記憶の情報処理を反映しているのかを判定することが可能となった。次に、遅延条件性音-位置連合記憶課題の訓練の手続きを確立し、まず運動テストをラットに学習させた後に弁別の要素を加えた本課題を学習させた。この手続きでは、約3から5日程度でラットの正答率は漸近値に達することが分かった。この期間では同じニューロン集団からの神経活動を記録し続けることが可能であり、長期記憶形成中の海馬や大脳皮質のニューロン活動の変化を解析することが出来ることがわかった。さらに、海馬と大脳皮質のニューロン活動の記録をする実験システムについて、個々の電極を独立に操作可能なマイクロドライブ(ラットの頭部に取り付けた電極のマニュピレータ)の改良を行った。その結果、14本のテトロード電極(記録電極12本、基準電極2本)を独立に操作可能なマイクロドライブを作製できた。この方法により、異なる部位にある大きなニューロン集団からの同時記録が可能となった。
すべて 2008 その他
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Reviews in the Neurosciences 10
ページ: 425-440
Neuroscience 153
ページ: 1402-1417
http://www.bun.kyoto-u.ac.jp/~ysakurai/