昨年に引き続き、長期記憶形成のプロセスを捉えるため、ラットに遅延条件性音-位置連合記憶課題を訓練した。この課題は、音の高低とノーズポーク反応する穴の位置の関係に関する長期記憶を形成する課題である。また、行動と神経活動のより明確な相関関係を調べるためのコントロール課題として、これまでの運動テスト課題と感覚テスト課題に加え、全ての条件を課題と同じにして報酬も与えながら、ノーズポーク反応はさせない無反応課題も開発した。この無反応課題により、遅延条件性音-位置連合記憶課題の反応期間中の神経活動が、特定の運動成分を反映しているのか、特定の感覚成分を反映しているのか、あるいは連合記憶の形成を反映しているのか、より正確に解析するすることが可能となった。次に、遅延条件性音-位置連合記憶課題の訓練の手続きをより効率化するため、まず運動テストと感覚テストをラットに学習させた後、弁別の要素を加えた本課題を学習させ、最後に無反応課題を学習させることにした。この手続きにより、約4~5日程度でラットの正答率は漸近値に達することが分かった。またニューロン活動の大規模な同時計測のために、昨年に引き続き、記録電極を独立して操作可能なマイクロドライブの改良を行った。直径12.5μmのタングステン線を4本巻くことにより作製されたテトロード電極を改良型マニュピレータへ複数本取り付け、個々の電極を微細に調整することにより、大規模なニューロン集団からの同時記録を可能とした。特に電極の設置点を海馬と前頭前野の脳座標の2カ所に分岐することで、海馬と大脳皮質のニューロン集団から同時記録する方式を確立した。
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