すでに開発した遅延条件性音-位置連合記憶課題をさらに改良した。具体的な方法は以下のとおりである。(1)ラットが中央の穴へノーズポークすることにより試行が開始し、1秒間その反応をホールドすると10kHzもしくは1kHzの音が1秒間呈示された。(2)音の呈示後に1秒間の遅延期間をはさんだ後の反応期間において、10kHzの音が呈示された時は右の穴へ反応することにより報酬が与えられ、1kHzの音が呈示された時は左の穴へ反応することにより報酬が与えられた。(3)この課題の訓練に先立ち、運動発現や刺激提示に対するニューロンの応答を検出するため、運動発現課題と刺激弁別課題を学習させる手続きを確定した。 マルチニューロン活動を記録するシステムについては、昨年度開発した多数ニューロン活動の同時記録システムをさらに改良した。具体的には以下のとおりである。(1)長期間記録の方法を確立するため、単一ニューロン活動に分離したスパイク波形の類似性および日ごとのスパイク波形の変化を追跡した。(2)マイクロドライブの電極装着箇所を海馬と前頭前野など離れた複数箇所に分岐させることにより、異なる部位から多数ニューロンを同時記録し相互作用を解析した。 記録したマルチニューロン活動の解析については、昨年度に引き続き、解析システムのハードウエアとソフトウエアを共に改良した。具体的には以下のとおりである。(1)記録したマルチニューロン活動を個々のニューロン活動にリアルタイムで正確に分離するプログラムのアルゴリズムを改良し、さらに高性能コンピュータの導入によりその精度と処理速度を上げた。(2)ニューロン集団を構成するための機能的シナプス結合とその変化については、相互相関解析以外に、多数のニューロン間の機能的結合をそのまま視覚化し、機能的神経回路の動作を一気に表す方法について検討した。
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