本年度は、研究計画の四つの柱のうち、次の三つに焦点をあてた。 1、一番目の柱である「教育段階別の歴史分析」については、義務教育を中心に、財政の標準化と地域格差の変動を構築したデータベースに基づいて、戦後の日本の教育政策の特質を抽出した。その経験を踏まえて、高校段階のデータベースを完成し、その歴史分析に着手した。 2、二番目と三番目の柱、つまり「財政支出と家計負担」の地域間比較、および「進路選択のメカニズムと家計の教育費負担」の二つを総合的に把握するための分析を検討する過程で、教育政策に対する国民の意識を解明する必要があるという合意に達した。同時に、本研究の趣旨に即して、「都市と地方」の視点、および教育だけでなく、社会保障との比較という視点が必要だと考えた。そこで、本年度は、「教育と社会保障に関する意識調査」を教育県の一つである富山県をフィールドに、郵送法によるアンケート調査を実施した。次年度には、首都圏で実施し、比較する予定である。 3、四番目の柱のうち、「教育財政・教育制度の国際比較」については、デンマークとフィンランドの訪問調査を実施した。幼児教育から大学教育までの財政政策を対象にしたインタビュー調査であり、その内容は、報告書(「家族政策と教育財政に関する調査」)として取りまとめた。あわせて、国際比較分析を可能にする統計データベースの構築に着手した。
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