本年度は、研究計画の理論的枠組みを洗練させ、資料・統計の分析を深めた。義務教育と中等教育段階のデータベースはほぼ完成したので、本年度は国際比較データベースを充実させ、ほぼ完成した。前年度に富山県で実施した「教育と社会保障に関する意識調査」の内容を再検討し、若干の修正を加えて、東京都の選挙人名簿に基づいた5000人規模の調査を実施した。本年度は、この調査実施に多くのエネルギーを投入した。郵送法による調査であるが、40%ほどの回収率に達した。一般にいわれている25%回収率よりも高く、都民の関心の高さがうかがえられる。この調査の実施を柱とし、データベースの分析を、研究グループの編成に基づいて、深めた。 1教育段階別の歴史分析と学力の生産関数分析: 義務教育および中等教育の規模と財政構造の変容を解明するにあたって、今年度は、都道府県別の学力調査データを整備し、学力の生産関数に財政力が与える影響を分析した。 2「教育政策と社会保障に関する意識調査」の実施と分析: 教育政策に対する意識を社会保障政策に対する意識との関係から調査し、財政と家計負担の問題を家族社会学的に分析する。昨年度の富山県調査の結果については、日本教育社会学会で報告した。年金・医療・雇用の政策は、社会責任主義が強いけれども、教育政策については、家族責任主義が根強いことが浮き彫りにされた。この調査と今年度の東京都調査を比較しながら、分析を深める予定である。 3進路選択のメカニズムと家計の教育費負担: 大学の大衆化を「前期大衆化」と「後期大衆化」に分ける枠組みの必要性を検討し、後期大衆化にある今日の進路選択を日本的ペアレントクラシーという視点から分析を重ねた。 4教育財政・社会保障制度の国際比較: 教育だけでなく、社会保障の支出を含めた国際比較データベースを整備した。
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