本研究の目的は、算数・数学科における「研究授業」の役割と機能を「集団思考」の質に焦点を当てて明らかにすることである。 わが国の「授業研究」およびその中で中核となる「研究授業」は、近年、急速に海外に普及してきているが、その質が問題となってきている。実際、算数・数学科においては、確かにわが国で望ましいとされる問題解決型の授業展開となっているが、「集団思考」の場面が形骸化し、思考が深まっていない実態が見いだせる。そこで、本研究では、わが国の「授業研究」「研究授業」に関心の高い米国と、わが国の算数・数学科の授業の特長を「集団思考」とみているオーストラリアの研究者を海外共同研究者とし、異文化の光の元で「研究授業」における「集団思考」の質にメスを入れていくことで、「研究授業」の役割と機能を「集団思考」の質に焦点を当てて明らかにする 20年度は、日豪の算数・数学科「研究授業」を「集団思考」の様相に焦点をあてて分析した。 (1)日本の小学校第一学年「繰り下がりのある引き算」の「研究授業」および「研究授業」後の研究討議会の実態データを収集し分析した。 (2)豪国の小学校第一学年の算数「何番目」の「研究授業」を収集し分析した。 (3)日本と豪州の授業を共通の視点(発話者とその受け手)で図化し、その特徴を考察した。 (1)(2)(3)を統合的にみて「集団思考」の様相をとらえる枠組みの構築を試みた。その成果を日本数学教育学会論文発表会に発表した。
|