研究課題/領域番号 |
20243039
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
藤井 斉亮 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (60199289)
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キーワード | 数学教育学 / 授業研究 / 集団思考 / 比較文化的研究 / 研究授業 / 問題解決型授業 |
研究概要 |
本研究の目的は、算数・数学科における「研究授業」の役割と機能を「集団思考」の質に焦点を当てて明らかにすることである。 わが国の「授業研究」およびその中で中核となる「研究授業」は、近年、急速に海外に普及してきているが、その質が問題となってきている。実際、授業研究に関する種々の誤解が問題になってきている。算数・数学科においては、問題解決型の授業展開となっているが、「集団思考」の場面が形骸化し、思考が深まっていない実態が見いだせる。そこで、本研究では、わが国の「授業研究」「研究授業」に関心の高い米国と、わが国の算数・数学科の授業の特長を「集団思考」とみているオーストラリアの研究者を海外共同研究者とし、異文化の光の元で「研究授業」における「集団思考」の質にメスを入れていくことで、「研究授業∫における「集団思考」様相をその質において具体的に明らかにする。 平成23年度は、「授業研究を推進する過程で見出された困難点」と題して、学者・専門家交流事業『授業研究による数学及び理科教師の教授能力向上に関する東アジア4ヵ国国際会議』(広島大学)及び日本数学教育学会論文発表会(上越教育大学)等において研究発表を行った。中学校数学問題解決型の授業に焦点を当て、そこでの「集団思考」の様相を変数概念の理解に焦点を当てて明らかにした。また、本研究の海外協力者Susie Groves氏らと連名の研究論文 "The Critical Role of Task Development in Lesson Study" を執筆し、これを基にAERAにおいてシンポジウムを行い、論文はSpringer社から出版(2011)されたLesson Study Research and Practice in Mathematics Education: Learning Togetherに所収された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で焦点を当ててきた「集団思考」の様相について、日米豪の研究者間で研究討議を活発に行い、研究の成果を国際誌や国内の学術誌に発表してきている。また、「研究授業」を内包する授業研究自体についても比較文化的視点からの考究が進み、研究成果の一部を国内の学会や米国の学会で講演し、カンボジアにおいては招待講演で発表するなど国内外から評価されている。国内外の共同研究者との運携も円滑で研究活動及びその成果と研究経費の使用実態が整合的である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では「研究授業」における「集団思考」の様相に焦点を当ててきたが、「研究授業」を内包する授業研究自体を比較文化的視点からより一層深く考究する必要がある。各国で授業研究に対する誤解や抵抗が次第に顕在化されてきたからである。今後は、授業研究を推進する鍵要因について比較文化的視点を踏まえて特定し、「研究授業」における「集団思考」の様相の分析に反映させていく。
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