本研究の目的は、算数・数学科における「研究授業」の役割と機能を「集団思考」の質に焦点を当てて明らかにすることである。 わが国の「授業研究」およびその中で中核となる「研究授業」は、近年、急速に海外に普及してきているが、その質が問題となってきている。実際、授業研究に関する種々の誤解が問題になってきている。算数・数学科においては、問題解決型の授業展開となっているが、「集団思考」の場面が形骸化し、思考が深まっていない実態が見いだせる。そこで、本研究では、わが国の「授業研究」「研究授業」に関心の高い米国と、わが国の算数・数学科の授業の特長を「集団思考」とみているオーストラリアの研究者を海外共同研究者とし、異文化の光の元で「研究授業」における「集団思考」の質にメスを入れていくことで、「研究授業」における「集団思考」様相をその質において具体的に明らかにする。 平成24年度は、授業を記述するためのソフト(Lesson Note)を継続的に開発・活用して「集団思考」の様相を記述し、その結果に基づいて研究討議を行った。また、日米豪の「研究授業」後の研究協議会の実態を観察し、データ収集を行い、教材研究の成果がどのように組み込まれているかという視点から分析と評価を行い、指導技術に偏重する日本の実態が顕在化した。米豪において、「問題解決型」授業を試行した。特に平成24年5月3日、4日にシカゴにおける授業研究の実際を見た後で、研究討議を行った。また8月27日~9月14日に東京学芸大学で開催されたアフリカ諸国を対象にした授業研究ワークショップにおいて、「集団思考」に関する研究フォーラムを持ち、日米豪の研究者間で研究討議を行った。これらを統合的にみて「集団思考」の様相をとらえる枠組みとして学習が個人的活動であるとする文化的鍵要素を特定した。研究成果を日本数学教育学会・日本教科教育学会に発表した。
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