研究概要 |
以下の互いに関連する事柄を目標とした。 (1) 有限簡約群の指標表の完成。 有限体上の簡約代数群の既約指標を決定し、その指標表を計算するアルゴリズムを完成させることを目標とする。有限簡約群の既約指標決定への統一的なアプローチを与えるルスティック予想は簡約群の中心が連結な場合に、研究代表者によって解決された。本研究では、一般の有限簡約群に対してルスティック予想の解決を目指す。ルスティック予想が解決されると既約指標の決定は、(1) この予想に含まれるある種のスカラーの決定と、(2) 一般グリーン関数の計算に含まれるベキ単元の良い代表元を選ぶ問題の二つに帰着される。(1)、(2)の問題はルスティックの指標層の理論と密接に関係しており、その方向から解決を目指す。 (2) 複素鏡映群に付随したグリーン関数とマクドナルド関数。 C_n型ワイル群の拡張として複素鏡映群G(r,1,n)が考えられる。1994年にG(r,1,n)に付随するヘッケ環(有木-小池代数H_{n,r})が有木-小池により構成された。G(r,1,n)をワイル群に持つ代数群は存在しないが、ヘッケ環H_{n,r,}はある意味で、仮想的な代数群の退化形と考えられる。斜交群Sp_{2n}の拡張としてG(r,1,n)をワイル群に持つ仮想的な群Sp_{rn}に対しても有限簡約群の諸性質が成立することが分かってきた。本研究では、このSp_{rn}に対する〈仮想的な〉指標表を構成することを目標とする。この問題は(1)の問題の自然な拡張であって、(1)で提起された既約指標の分類とそれを計算するアルゴリズムを組み合わせ論的に再構成することを目指す。これに関連して研究代表者は、G(r,1,n)に付随したホール-リトルウッド関数やマクドナルド関数を導入し、それから得られるグリーン関数の性質を調べた。本研究では更にそれを発展させたい。 (3) 有木-小池代数に付随した円分q-シューア代数の分解定数有木-小池代数H_{n,r}のパラメータが1のベキ根の場合の表現、すなわちモデュラー表現は、A 型ヘッケ環のモデュラー表現がGL_nのモデュラー表現と密接に関係することからも重要である。円分q-シューア代数S_{n,r}はある種のH_{n,r}加群の準同型環として定義される。研究代表者は大学院生の和田と共に、S_{n,r}のある種の分解定数に関する積公式を証明し、また対応する高次レベルのq-フォック空間の標準基底についても同様の公式が成立することを示した。これはH_{r,n}の分解定数がq-フォック空間の標準基底によって記述されるという予想を支持する結果である。本研究では、S_{r,n}の分解定数を有理チェレドニク代数との関連で調べることを目指す。
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