研究課題
近年、幾何学は微分幾何学の枠組みを超えて、特異性を持つ対象に対する興味が高まっている。本研究は、確率論的手法を利用し、特異性のある空間や離散的な空間の幾何学の新たな研究方法を開拓することを目的としている。特に(1)ベキ零被覆の場合の大偏差と無限遠の接錐の関係(2)指数増大度をもつ有限生成群上のランダムウォークの長時間挙動とその幾何の関わり(3)質量輸送理論を用いたエントロピーの幾何学的意味の解明と極限定理(4)非可換空間のラプラシアンのスペクトルと幾何構造の関わり、をテーマに研究を進めてきた。平成22年度にはそれまでの成果を再検討し、必要な指針修正を行うことを目的に、非可換幾何学、配置空間、幾何学的量子化などと離散幾何学の係わる国際研究集会を開催予定であったが、東日本大震災のために延期した。しかしながら、研究課題は順調に進展しており、幾何と確率論に関する論文集Probabilistic approach to geometryを発表した他、いくつかの設定における熱核の評価等、後述のような成果を得た。また、ランダムウォークの量子版である量子ウォークや、非対称ランダムウォークの長時間挙動の幾何学的理解、ランダム群の固定点性質、Alexandrov空間のBishop-Gromov型の不等式、ランダムグラフの収束性などに関して、新たな研究方向が見出され、平成23年度に研究計画を予定通り遂行できると期待している。国際研究集会の開催も企画している。
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