研究課題/領域番号 |
20244011
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
中井 直正 筑波大学, 数理物質系, 教授 (80192665)
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研究分担者 |
瀬田 益道 筑波大学, 数理物質系, 講師 (80358994)
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キーワード | 電波天文学 / 宇宙物理 / 天の河銀河 / アンモニア分子 / 星形成 |
研究概要 |
大学の近くにある国土地理院の32mアンテナを用いて(共同研究協定は締結済)天の川銀河全面の高密度ガスの掃天観測を行うため、アンモニアの23GHz帯の高感度化の開発を継続し、掃天観測を継続した。 受信機の利得変動の主要因であった23GHz伝送用同軸ケーブルの温度変化による利得変動の実測値を求め、ケーブルの伝導損失の温度変化の理論値と一致することを明らかにした。それに基づき、ケーブルを断熱材で覆って利得変動を大きく軽減し、受信機の安定化を図ることができた。それによって観測時間の効率化をはかることができた。 天の川銀河のアンモニア反転遷移(J,K)=(1,1)-(6,6)の掃天観測を継続した。但し、平成23年3月11日の東日本大震災の影響による4月の観測中断、夏場に運用上の問題がありその改善のため観測を中断したことと、および12月にアンテナの利得が大きく低下したことが明らかになり、その原因が平成24年2月になってやっとわかり、3月に修理したものの別の理由によりさらに利得が低下し、その原因追究と解決が4月になったため、観測はあまり進捗しなかった。なお、12月に明らかになったアンテナ利得の低下は、4本の副鏡支持機構(ステー)のうち下側の1本に大きな亀裂が入り、対向する上側の1本にも少し亀裂が入っていたため、アンテナを傾けると仰角によって副鏡の位置が正規の位置からずれてしまうためであると判明した。ただし、亀裂が入った理由は明確ではない。さらにその亀裂の補修後の3月に判明したさらなるアンテナ利得の低下は23GHz帯と2/8GHz帯の受信機切り替え用の鏡の位置がずれていたためと判明し、修理した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度夏に大きな落雷の被害により長期のアンテナ運用停止があったこと、東日本大震災によるアンテナ運用停止、夏期における運用見直しによる長期観測停止、アンテナ利得の大きな低下の原因(副鏡支持機構の亀裂と受信機切り替え鏡の位置ずれ)の解明と修理のために長期にアンテナ運用停止になったことで観測時間が極端に制限されたため。
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今後の研究の推進方策 |
アンテナの故障の修理は終了したので、観測を進展させる。銀河面の銀経が1度よりも大きな領域に観測範囲を拡大する。取得したアンモニアの(J,K)=(1,1)-(6,6)の6本の輝線の強度比からアンモニア分子の励起温度、柱密度、オルソ・パラ比を求め、それらの銀河面に沿った分布から銀河系中心部やいて座Bおよび銀河系の分子ガスの物理量の分布と運動を明らかにする。
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