研究課題
筑波大学の近くにある国土地理院つくば32mアンテナの性能測定と不具合の調査を行うとともに、当該アンテナを用いて星形成の母体である高密度分子ガスをトレースするアンモニア分子の回転反転遷移(J,K)=(1,1)-(6,6)の6本の輝線を同時観測して天の川銀河(銀河系)の中心部およびオリオン分子雲の掃天観測を行った。天の川銀河の中で最も活動的で分子雲も集中している中心部の銀経-0.5°~1.4°、銀緯-0.25°~+0.2°の領域のアンモニアの上記6輝線をマッピングした。輝線の強度やその比から、分子雲の励起温度(現在の温度)、柱密度、アンモニア分子が形成された過去の温度などを求めた。その結果、(1)分子雲内部の温度に対して外層部の温度が高いこと、(2)この領域内のガスの分布を大きな銀河円盤と見た際にも円盤の上下の外層で温度が高く、円盤外部から加熱を受けていると考えられること、(3)オルソパラ比から推測する過去の温度と現在の温度の比較から、そのような温度分布は過去1千万年程度では変化がなかったことなどがわかった。これから分子ガスの加熱機構や環境について推測した。また天の川銀河中の典型的な大質量星形成領域であるオリオン分子雲のアンモニア6輝線のマッピングを行った。その結果、(1)最も分子ガスの密度が高いオリオンKLと呼ばれる領域ではすでに大質量星が形成され分子雲の収縮と星形成が速く起きたのに対し、ガス密度の絶対値は低いが周囲よりは密度が高いリッジ部分では原始星が多数存在し現在星形成が進行中で、分子雲の収縮と星形成がゆっくりと進行していること、(2)現在の励起温度はオリオンKLと呼ばれる若い大質量星がある場所と外部輻射にさらされている分子雲外縁で温度が高いのに対し、過去の温度は分子雲の内部で高いことがわかり、その違いからオリオン分子雲での星形成史を推測した。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Astronomy and Astrophysics
巻: 552, A34 ページ: 5
DOI:10.1051/0004-6361/201118593
The Astronomer's Telegram
巻: 4923 ページ: 1-1