MAXIは前年度8月から観測を開始した。放射線劣化を防ぐため観測を低緯度帯のみに制限するなどで観測効率は下がったが、検出器の健全性は確保され、データを安定して取得できる状態になった。それを踏まえ本年度は、下記の2項目を行った。 (1)データ解析方法の確立 MAXIのデータ解析には、MAXIがスキャン観測のため従来の指向性X線衛星で用いられた解析方法とは異なる手法が必要である。例えば、ある1天体のデータは、2009年の観測開始から今日までのすべての日のデータに含まれているので、摘出するには全データにアクセスしなければならない。それには約30時間かかる。それを迅速に行う方法として、データベース技術を用いたデータストーレージ方法と、あらかじめ天空を約3度四方の領域に分けてデータソートしておく方法の2つを試した。どちらも3時間程度に高速化できた。しかし各形式に整形する時間が前者では数か月、後者では1週間と大差があり、後者の方が実用的であることが分かった。 (2)AGN光度曲線の取得 X線変動質量推定法では、PSD(フーリエスペクトル)上で冪関数が折れ曲がる「折れ曲がり周波数」からブラックホールの質量を推定する。そこでまず、信頼できる連続的な光度曲線を作成することが必要となる。MAXIでは、特定の天体を観測するカメラの数や、視野内での天体位置は毎スキャンごとに変化していく。それを適切に補正し2年にわたり均質な光度曲線を得る。本研究では、3種類のデータセレクション方法と3種類のバックグラウンド除去方法を実際のデータに適用し、最善なものを決定した。そうして、最善なAGNの光度曲線を得た。
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