研究概要 |
理論研究に関しては,核スピン値が大きな値を持つアルカリ土類金属の同位体について超高速核スピン偏極の理論計算を行い,核スピン値が小さな同位体よりも到達スピン偏極度は減少するものの,従来の手法で到達できる偏極度(<数%)よりも格段に高い偏極度がナノ秒という超高速スケールで達成できることを示した。具体的には,核スピン値が1/2,3/2の場合には到達偏極度がそれぞれ89%,76%であったのに対し,5/2,7/2の場合にはそれぞれ49%,36%であるという結果が得られた。 また,実験研究については,これまで原子発生にレーザーアブレーション法を用いていたために発生原子数密度が安定せず,また,その数も測定に十分とは言えなかったため,今年度は新しくるつぼを導入し,抵抗加熱法によって原子を発生させる方式をとったところ,レーザーアブレーション法に比べ格段に安定し,また,多量の原子を発生させることができた。これにより,安定した実験ができるようになった。また,Ybの超高速核スピン偏極実現に向けて予備実験を行った結果,我々が現在使用しているナノ秒色素レーザーの波長分解能では核スピン偏極の検出に十分な波長分解能がないことが分かったので,連続発振狭帯域チタンサファイアレーザーを色素レーザーでパルス増幅するレーザーシステムを開発中である。パルス増幅に関する部分は開発および調整を終え,現在は種光の部分である連続発振狭帯域チタンサファイアレーザーの波長スキャンシステムを開発・調整している。
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