研究概要 |
素粒子の標準理論のほころびが最初に現れるのはビッグス粒子が関与する部分だろうし、世代の起源を明らかにするには標準理論を超えることが不可欠である。LHCの実験でビッグス粒子の探索が始まり、また超対称性粒子が存在するかどうかも明らかになるだろう。新粒子の発見、ヒッグス粒子の相互作用の確定を通して、現在の電弱統一理論の基本的枠組みが正しいか、対称性の破れの起源は何か、そして3世代あるクォーク・レプトンの起源は何かなどを明確にするのが本研究課題である。これらを踏まえ、細谷達は高次元ゲージ理論でヒッグス場とゲージ場を統合するゲージ・ヒッグス統合理論を構築し、宇宙論的帰結もあきらかにした。 細谷達はRandall-Sundrum時空上で、現実的なクォーク・レプトンを含むSO(5)xU(1)モデルで、W, Zボゾン、ビッグスボゾン, クォーク・レプトンの波動関数を決定し、電弱相互作用のゲージ結合の大きさ、湯川結合の大きさを決定した。前年度に、すでに、Aharonov-Bohm位相の値が量子効果により、90度となることが示された。このことを使い、ビッグス場との3点結合は、厳密に零になることが明らかにされた。これより、ヒッグスボゾンが安定になるという驚くべき描像が帰結される。さらに、その結果として、現在の宇宙の暗黒物質は実はビッグスボゾンであるという可能性が生じる。WMAPのデータから決められた宇宙の暗黒物質の質量密度から、ビッグスボゾンの質量が約70GeVと決定された。これらは、画期的な重要な結果であり、今後、暗黒物質探索、加速器実験で更なる検証がなされるであろう。 また、2010年1月には、「余剰次元物理」研究会を開催した。2年後には国際研究会に発展させる予定である。
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